須藤 修 会長

 社会情報学会会長の須藤修です。

 これまで学会発表大会や学会主催シンポジウムでは、ワクワクする研究成果、活動成果をたくさん拝見・拝聴してきました。学会員の皆様による、優れた学会活動、改めて感謝申し上げます。

 今日、情報ネットワーク社会は急速に新たな次元での発展を加速しています。2007年からはじまったクラウド・コンピューティングは徐々に世界中に浸透し、新たなグローバル・ネットワーク社会が形成されてきました。ビッグデータ分析、機械学習を用いたデータサイエンスの隆盛、そしてクラウドはSNSの基盤となり、グローバルな規模でさまざまなコミュニケーションが可能になりました。それにともないフェイクなどの社会的課題も先鋭化しています。また2014年のJ・ヒントンによるディープ・ラーニングの研究成果発表を画期として、クラウド・コンピューティングとスーパーコンピュータを基盤にした人工知能の研究開発とその世界的展開が大規模に進んでいます。その過程でGAFA、BATなど、膨大なデータと優れた人工知能と大規模な計算基盤を有する巨大企業の動向に世界の注目が集まっています。そしてELSIもこれまでにもましてその重視性が認識されるようになりました。それ自体は技術でないELSIが重視されるのは、それほどまでにクラウド、膨大なデータの分析と利活用、AIなどが、これからの社会、そして人間の在り方に深い影響をもたらすことが広く理解された結果だとも言えます。

 私が議長を拝命しています内閣府「人間中心のAI社会原則検討会議」は、2019年3月に「人間中心のAI社会原則」を発表し、AIを積極的に利活用するこれからの社会の在り方、人間とAIの関係の在り方に関する基本的理念を提示しました。そこに示された理念はOECD、UNESCOをはじめとした国際機関、G20、G7をはじめとする国際会議、世界各国政府から多くの賞賛を頂きました。「人間中心のAI社会原則」では、学術とイノベーションの関係の在り方についても積極的に言及しています。たとえば、第7原則として「イノベーションの原則」では、「Society 5.0 を実現し、AI の発展によって、人も併せて進化していくような継続的なイノベーションを目指すため、国境や産学官民、人種、性別、国籍、年齢、政治的信念、宗教等の垣根を越えて、幅広い知識、視点、発想等に基づき、人材・研究の両面から、徹底的な国際化・多様化と産学官民連携を推進するべきである。」(人間中心の社会原則、11ページ)と述べ、大学・研究機関・企業の間の協業・連携や柔軟な人材の移動を促す必要性を強調しています。

 今後、私たちは、より具体的な構想を積極的に行い、様々なステークホルダーと対話を深め、社会に積極的な貢献を行うべきと考えます。また、「人間中心のAI社会原則」の第6原則「公平性、説明責任及び透明性の原則」では、AI を安心して社会で利活用するため、「AI とそれを支えるデータないしアルゴリズムの信頼性(Trust)を確保する仕組みが構築されなければならない」(同上)と述べています。私たちは「信頼性」(Trust)の在り方についてより深い考察とそれに基づいた提案を行い、社会に問うべきでしょう。

 私は、これまでにもまして社会情報学会の存在が重要になってきていると思います。文理協働、文理融合の活動を重視してきた社会情報学会は、社会の大変革期にあって、力強く学問間の交流・架橋を行い、そして学問と社会との連携をより深化させてゆくべきと考えています。学会員の皆様のご活躍とご協力がますます重要になります。学会員の皆様、これからもワクワクするような創造的な展開と社会とのさまざまな協働を期待しています。

(2020.1.1)