伊藤 守 会長

2012年3月 学会発足時挨拶

 2月28日に「一般社団法人社会情報学会SSI」の登記を行い、同日正式に新しい学会が発足しました。
 この2年近い期間、JSISとJASIは互いに新しい学会を組織すべく協議を行い、新学会の定款案やその他の規程について検討を積み重ねてきました。この間、新学会の設立に向けてご努力いただいた両学会の会員の皆様に心から感謝申し上げます。さらに、多くの会員から建設的なご意見が寄せられたことに対して敬意を表したいと思います。

 新学会「一般社団法人社会情報学会SSI」の設立は、以下の点で、大変大きな社会的意義を有するものであり、会員の方々にとっても今後の研究教育活動に資するところ大であると考えます。
 第1は、同一名称の二つの学会が存在するという「不自然な状態」を解消することで、この分野の研究者とりわけ若手研究者の参加と研究交流を大きく促し、社会情報学のさらなる飛躍につながることが期待されます。
 第2は、デジタル化、ネットワーク化が急速に進展するなかで、これまで以上に「社会における情報過程」を研究対象とする「社会情報学」の存在意義が高まり、その発展が期待されています。こうした状況で、それぞれの出自が異なり、また学問的基盤も異にする二つの学会が、「社会情報学」のより一層の発展を目指すという共通の認識に立って新学会を設立したことは、この分野の学問的発展に必要な裾野を拡大し、理論的研究、実証的研究の両面で大いに寄与することにつながるものです。
 第3は、一般社団法人として学会を設立したことで、学会として研究資金を獲得できる道を確保するとともに、これまで以上に国内外に向けて社会的認知度や信頼性を高めることが可能となりました。SSIの名称を活用して、研究会・ワークショップ・シンポジウムなど様々なレベルで、海外の研究者・研究機関・関連学会との連携や共同研究を行うことを積極的に進めていきたいと思います。
 JASIならびにJSISの会員の方々が、これまでの活動以上に、SSIの会員として積極的に学会活動に参加されることを期待します。
 また、この分野の多くの研究者に対して、この学会の理念・目的に賛同していただき、入会していただけますようお願い申し上げる次第です。

2013年6月 発足1年での挨拶

 社会情報学会(SSI)が発足して1年が経過しました。この間、多くの新会員を迎えることができたことを嬉しく思います。

 社会における情報過程と情報現象を理論的かつ実証的に解明し、今日の課題を析出してその解決に寄与する学問的営為は益々重要となっています。「311東日本大震災」と「原発事故」は日本の学術全体に深い反省を迫るものであり、学問研究が背負う重い社会的責任をあらためて指し示す出来事でしたが、それは、当然のことながら、学会という社会組織にも同様に指摘されねばならないことがらであると言えるでしょう。

 社会情報学の研究を専門とする会員と学会が、歴史的な広がりの中で、現在の社会情報過程が孕む問題や課題を的確に把握し、その解決の方途を、広く社会の構成員に伝え、様々な分野の方々との対話と協同を通じて、よりよき情報社会・ネットワーク社会の構築に寄与すること、これがもっとも重要な学会の理念であると考えます。

 この課題を担うべく、3つのテーマを重点的に進めて参りたいと考えます。

 第1は、若々しい学問分野である社会情報学を今後牽引する若手研究者が活発に議論し交流できる環境をつくることです。これまでも、前身の「日本社会情報学会」の時代から、若手研究者の活動を意識的にサポートし、若手研究者自身の発案で「若手研究者ワークショップ」や「海外学会発表のためのワークショップ」などが開催されてきました。それを発展させて、さまざまなかたちで支援をおこない、若手研究者の中から斬新なアイデアや発想の下に独創的な研究が生まれる基盤を構築したいと考えます。

 第2は、関連する海外の学会ならびに個々の研究者単位での学問的交流を積極的にすすめ、国内外への情報発信を強めることです。すでに「国際交流委員会」を組織し、海外の学会との連携や学会大会の相互乗り入れ、海外の学会大会におけるSSIセッションの開催等の検討をはじめていますが、会員の協力を得ながら、この側面での展開を多角的にすすめていきたいと思います。

 第3は、「社会」という名を冠した「情報学」の重要性をアピールすることです。「情報学」といわれる分野は、ともすれば「理系」の学問分野であると思われがちですし、実際、「情報学」の多くの分野は「理系」の「情報科学」「コンピュータ科学」などから成り立っています。しかし、これらの分野から生まれた情報テクノロジーが「社会」の中に定位され、社会過程の重要な一部となった現代社会では、「人文社会系」の発想と知見を加えた「情報学」が重要な位置を占める必要があります。その意味で、近接する他の学会との連携をふくめて、「社会」と「情報学」とつなぐ学問分野の社会的位置をこれまで以上に高めていきたいいと考えます。

 社会情報学を理解していただき、その発展のために、多くの方々が入会されることを期待します。