橋元 良明 会長

 1996年に二つの「日本社会情報学会」が創設されました。英文略称ではJASI(前身は日本都市情報学会)とJSISです。2012年には、その二つの学会を土台として、本学会である一般社団法人社会情報学会(SSI)が発足しました。いずれも情報現象の過程・構造や、情報技術の進展と社会との関係等を、理論実証の両面から解明することを目指すという点では一致しており、新生学会初代伊藤会長による卓越した舵取りもあってここまで順調に発展してきました。

 この間、人類史上画期的と言っても大げさでない情報技術が我々のまわりに広く普及しました。言うまでもなくインターネットです。社会、経済、政治、文化等、いずれの生活領域においても、それが及ぼしたインパクトの大きさはコミュニケーションツールとして印刷術やテレビをも凌ぐものです。まさしく、その普及過程の渦中に身を置く我々の使命は、変化の過程やそれによる光と影を客観的に分析し、健全な社会の発展のための指針を掲げることです。本学会には、会員と一丸となって、その使命の遂行のために全力を尽くすことが社会的にも要請されているのではないでしょうか。

 今日、たとえば科学技術と社会の関係を考える際にも、技術的側面のみならず、法、倫理、社会システム、心理等、あらゆる領域の学問の知識と知恵の動員が必要になります。社会情報学は、幅広い研究領域からなる学際的学問であり、実際、本学会には人文社会情報科学の広い分野にまたがる研究者が会員として参加しています。この強みを生かし、今後もより積極的に社会に関与していくことが求められます。一方で、さらに多くの理系研究者も含め、一層多彩な関連領域の研究者に参加を求めていきたいと考えます。とは言え、ただ待っているだけでは、関連諸領域の研究者や現場をよく知る企業・公共団体組織関係者が進んで学会員になってくれるわけではありません。大会時におけるシンポジウムやワークショップ、研究会、学会誌の特集等を通じて、周辺領域の研究者等との連携を強め、より学際的な学会となるべく積極的に努力を積み重ねていきたいと思います。

 また、国際化はこの学会にとって積年の懸案事項ですが、いまだ十分に目標が達成されたとは言えません。今後は、英文誌を充実させ、国際交流委員会の活動をより活性化するとともに、とりあえずの取り組みとして、これまで以上に多くの日本在住の外国人研究者・留学生に会員なっていただくような活動を活発化することも必要です。情報環境に関して、海外でも貴重な先行事例となるような日本の経験は多々あるはずです。関連学会とも手を携え、日本の社会科学的な知的営為の存在を、より広く世界に認識してもらうことが重要です。

 前身の「日本社会情報学会」から数えれば早20年になります。さらに活動の活発な学会になるよう、会員の皆様とともにがんばっていきたいと存じます。

2015年6月