第123回日本社会情報学会(JASI)定例研究会のご案内                          JASI企画委員会委員長 木村忠正 ●テーマ:「情報ネットワーク研究における質的研究」第1回「定性・定量融合法に よる情報ネットワーク研究」 ●趣旨 デジタルネットワークの革新は、調査対象としてはもちろん、定量的分析の側面で著 しい革新をもたらしてきました。多変量解析、テキストマイニング、データマイニン グなどの分析手法が、コンピュータ科学、ネットワーク科学のみならず、社会科学、 人間科学においても容易に利用可能となり、データの構造解析手法が大きく発展する ことで、人々の集合的行為に関する構造的特性が明らかとなってきています。 しかし、あるいは、だからこそ、情報ネットワーク研究、コミュニケーション研究に おいても、定性的アプローチ、質的研究の重要性、エスノグラフィーの可能性は広く 認識されてきています。たとえ莫大なログデータであったとしても、定量的分析は、 例えば、「リンク」を、「リンク数」といった個数でのみ扱い、それぞれが持つ、個 別的文脈を捨象せざるをえません。あるいは、ネットワークを介した行動をログとし て捕捉することはできても、行動する際の人々の思考、心理、感情などの大半はネッ トワークに流れ出ることがありません。こうした限界は、莫大な定量的データを捕捉 し、分析可能であればあるほど、限界として意識されることとなります。 また、情報ネットワーク研究に限らず、「災害エスノグラフィー」をはじめ、質的調 査、エスノグラフィーへの関心は近年高まっており、産業分野における実践(「産業 エスノグラフィー」)も活発に行われつつあります。 そこで、JASI企画委員会では、本年度、定例研究会において、「情報ネットワーク研 究における質的研究」をテーマに、3回ほど、研究会を開きたいと考えております。 まず第1回は、「質的研究」「エスノグラフィー」に関する概説と、定量的分析と組 み合わせる「定性・定量融合法(mixed methodsあるいはhybrid methods)」の実践 をご報告し、参加者の皆さまと議論を深めたいと思います。 ●概要 ・日 時: 平成22年10月26日(火)17時〜18時30分 ・会 場: 東京大学駒場キャンパス・18号館4階コラボレーションルーム1 18号館は、駒場キャンパスの北側・第一グランドの南。駒場キャンパスで最も高層の建物です。 http://www.c.u-tokyo.ac.jp/access/img/map.pdf ・参加費:無料 ・申込・問合せ:日本社会情報学会事務局まで、氏名・所属を明記のうえ         E-mailまたはファックスでお願いします。         E-mail:office@jasi.info FAX: 0422-40-2062 ・申込締切日:2010年10月21日(木) ・定 員:45名 *申込戴いた方へ、お断りの連絡がない場合は定員内です。 *当日の参加は定員になり次第、締め切らせていただくことをご了承ください。 ・発 表 木村忠正(東京大学) 「情報ネットワーク研究における質的研究と定性・定量融合法」 本発表では、質的研究、エスノグラフィーに対する諸分野での関心と、その出発点で ある文化人類学における現状を概観し、情報ネットワーク研究における質的研究の方 向性を探ります。また、その方向性の一つとして、「定性・定量融合法(mixed methodsあるいはhybrid methods)」を位置づけ、具体的なリサーチプログラムの例 を報告したいと思います。 新井田 統(KDDI研究所) 披田野 千絵(同社) 「モバイル通信サービス利用におけるユーザ行動の調査」  現在、東京大学木村准教授との共同研究において、モバイル通信サービスにおける ユーザの利用行動の調査を行っています。今回の報告では、その中の一つとして、 カード型端末におけるユーザの利用行動について、グループインタビュー及びWebア ンケート調査結果から、ユーザの利用動機、及び利用行動の質的・量的分析を行った 結果について報告を行います。 ・発表後、フロアとの論議 ●発表者プロフィール 木村忠正: 東京大学大学院総合文化研究科。JASI・企画委員会委員長。 新井田統: KDDI研究所ネットワーク設計グループ。平成8年横浜国立大学大学院工 学修士課程修了。同年KDD研究所(現KDDI研究所)入社。現在コミュニケーション サービスを対象とした、ユーザの心理評価や、行動分析、新サービスの開発手法の研 究に取り組む。 披田野千絵:平成20年慶応義塾大学理工学研究科修士課程修了。同年、株式会社KDDI 研究所入社。現在、同社研究員として、通信サービスにおけるユーザ行動モデルの構 築の研究等に従事。 *なお、「情報ネットワーク研究における質的研究」シリーズとしては、今年度、 「パブリック・エスノグラフィー(自治体・行政の施策に関与する質的研究)」、 「産業エスノグラフィー研究」をテーマにした定例研究会の開催を予定しておりま す。